からっぽの世界/ホロウ・シカエルボク
変えてくれた
何時しか魚が取れなくなり
若者たちは仕事を求めて賑やかな街へと出向くようになった
彼らが行き帰りすることで
小さな漁師町にも文化が取り込まれた
町は明るくなり
都会から移住してくるものもいた
何年も何年もかけて風景は様変わりし
やがて港は観光客を受け入れるためのものになり
漁師たちの仕事場だった場所には地元の魚料理を出す店が出来た
でも魚は他所から車で運ばれてきたものだった
テツとマチとラノは子供らに連れられて
その店の第一号の客になったけれど
少しも美味いと感じることが出来なかった
マチは塞ぎこむことが多くなり
そのうち自分の名前も思い出せないよう
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