からっぽの世界/ホロウ・シカエルボク
きた
「お父さん、お母さん、今日のお魚です」
皆がそう言って持って来てくれた
テツとマチとラノは
街に溢れる若者たちを見ながら
これが皆自分たちの子なのだと
なにか信じられない気持ちで毎日を過ごすのだった
大人は次第に年寄になり
年寄は静かに死んでいった
もう少ししたらこの町は
テツとマチとラノの子供らばかりになる
子供らも年頃になり
そこいらで子供が生まれるようになった
テツとマチとラノはもう子を作ることもしんどくなっていたから
彼らとともに彼らの孫を育てた
人が溢れ
古かった街並みも次第に建て替えられた
テツとマチとラノの家も
若者たちが新しいものに変え
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