変なひと/石川
 
問いただすと酷くしゅんとしていたので
もう聞かないようにしている。
変なひといわく、夜のことはさっぱり覚えてないという。
かわいそうなのか羨ましいのかさっぱりわからないので
すこし同情してしまう。


「なんでいつも黒い服なの」

「これしか、持ってないから」

「そう、羨ましい」


「大変?」

「なにが?」

「黒い服じゃないから、大変?」


「うん、たまに。」


別に大変でもないけれど、そんな気分になってくる。
変なひとはなんとなくすまなそうに黙っている。
折込広告から顔をあげ、ちょっとこれみてよと声をかける頃には
すっかりいなくな
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