変なひと/石川
 
くなっている。


こぶ茶を出すと少しだけ長居をした。


「こぶ茶はやめて」

「なんで」

「懐かしすぎて」

「懐かしい?」

「うん」



「懐かしいのは悪いことなの?」


「うぅん、悪くない」

「そうよね」

「そう」


少し涙目になりながら変なひとはこぶ茶をすする。
わたしはいいものを見たように思う。水のなかでいちばん落ちにくい
雫は涙なんじゃないかと思う。乾くまで時間がかかる。

なんでも、うちを通り過ぎてから遥かかなたへ行ってしまうと
もっと懐かしく、おいしいこぶ茶があるらしい。
変なひとはその場所をめざし
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