あの灰が零時になるとき/ホロウ・シカエルボク
庭へと掃き出してまとめ
ライターで火をつける
そいつは
有り余る断片を吐きながら
すべてが煙になって消えて行く
鈴虫が鳴くのは
きっと喉が痒いせいだ
と
秋になるたびに話していた女は
この街でいちばん高い橋から
カゲロウのように飛び降りて散った
あとになって遺書が届いたけれど
それは
遺書どころか文章かどうかもあやしいようなものだった
それを読んだとき
おれにはわかったのだ
鈴虫が鳴くのは
喉が痒いせいなんだって
すべてのいきものになにもなければ
すべてのいきものは
生まれて死ぬまでただ黙っているだけだろう
おれは焼けただれたまま
彼女に手紙
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