あの灰が零時になるとき/ホロウ・シカエルボク
 

庭へと掃き出してまとめ
ライターで火をつける
そいつは
有り余る断片を吐きながら
すべてが煙になって消えて行く

鈴虫が鳴くのは
きっと喉が痒いせいだ

秋になるたびに話していた女は
この街でいちばん高い橋から
カゲロウのように飛び降りて散った
あとになって遺書が届いたけれど
それは
遺書どころか文章かどうかもあやしいようなものだった
それを読んだとき
おれにはわかったのだ
鈴虫が鳴くのは
喉が痒いせいなんだって
すべてのいきものになにもなければ
すべてのいきものは
生まれて死ぬまでただ黙っているだけだろう

おれは焼けただれたまま
彼女に手紙
[次のページ]
戻る   Point(2)