ただ真夜中が流れ落ちていくだけの/ホロウ・シカエルボク
 
か、安易な悟りを開くとか…そんなことはいっさいなかった、ただ一番早い記憶のような感触が連続し続けているだけだった、でも不思議なことに、俺はその場所を離れる気にはならなかった、いかさまな催眠術師にかけられた術がたまたま効いたかのようなぼんやりとした気分で、あるのかないのかわからない自我を楽しみながらずっとそうしていた、閉じたノートパソコンからはコステロのベストが延々流れていた、つけっぱなしのエアコンのせいで部屋はよく冷えていた、消してしまうとこの部屋はたちまちのうちに異様なほどの湿気に支配されてしまうのだ…血、俺は血について考えることにした、状況としては妥当な選択だろうと思える―詩を綴るということは
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