僕らはいつも自分だけの譜面を探しているように/ホロウ・シカエルボク
人には、アキの気持ちなど決して理解出来ないのだろう…僕は先生の歌い方が嫌いだった、実力だ、集中力と確かな感性だ、先生の歌声からはそんなものしか感じられなかった、それは先生の声でありながら、先生自身を語るものでは決してなかった、他の上手なだけの誰かと取り換えが利くものだった、そんなものが正しい歌であるはずがない、正しい音楽であるはずがない―でも、便宜的な正しさによって統一された小さな社会の中でそんなことを思っても仕方のないことだった、広い校舎の中で、そのイデーに支配されていない場所はトイレぐらいだった、だから僕らは休み時間のたびに無意識にそこに向かって歩いていたのだった―昼休み、僕が校庭のベンチに腰
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