僕らはいつも自分だけの譜面を探しているように/ホロウ・シカエルボク
 
彼はずっとそこにいるんだもの―アキは歌が苦手で、それでも口パクをしていると先生にはすぐに悟られるから(なんでも全員の声を記憶しているという話だった)、すごく小さい声でメロディを追っていた、歌がヘタだからこれで許してください、と暗に懇願しているボリュームだった、音楽の授業はなぜいつも歌わされるばかりなのだろう、とそんな彼女を見るたび僕は思うのだった、歌が苦手な生徒は楽器を覚えるとかにすれば誰も嫌な思いをしないで済むのに―あるいは体育の授業のように見学が許されるとか、とにかく楽しくない音なんてタイトルに反しているといつも考えていた、無数の穴が開いたボードに囲まれた部屋の中で朗々と声を張り上げている人に
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