愛しのマリ/ふじりゅう
 
では築ける筈もないが
ひとえに、あるいは一心に景観を作る一途さに
心洗われてしまいたい

ある日 幾人もが思うであろう、または悟るであろう
その境地に辿り着いた時
右手に厳命を下した「刺せ」と
果たして命を奪う事無く 未亡人のナイフは投げ捨てられ
今も川底で息づき 私と呼吸を連動している
私の心臓は脈打ったままだ

すばしこく逃げる台詞を捕らえては
磔の刑にした 尸だらけのスケッチブック
日の当たらぬ家の机の引き出しに隠している
鮮やかに彩る初秋の木々の下で
はしゃぐ子供と母が 信号を待っている

傷だらけの猫を捕まえて
頬ずりのみをした街灯の眩しい下
太陽を
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