旧作アーカイブ4(二〇一六年三月)/石村
げな変ホ調の
かるがるとしたアレグロで
きらきらと 水晶青の風さやかに
かなたの空へと駆け上がる
死に行くものの世界を あとにして
聖らかな軌跡を 描きながら
やがて僕は 忘れられるだらう
やがてお前は 忘れられるだらう
秘めた囁きは もう 僕のものでも
お前のものでも なくなつた
昨日へと向いて 開いてゆく花は
僕らの明日に 咲くことはない
野辺を行く足音は まだ 憧れに満ちてゐる
でも それはとうに裏切られてゐる……
気付かぬ振りを してゐるだけだ 僕も お前も
耐へがたいまでにかすかな この痛みに
やがて僕は 忘れられるだらう
やが
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