旧作アーカイブ4(二〇一六年三月)/石村
で ここにゐる
これきりの命と 教へられて……しかし何かが 違ふ
違ふと 僕はもう知つてゐる 沁み入るまでに!
野辺に朽ちた昔の旅人は
今は黄色い花になり
深い夜の底で しづかに雨をきいてゐる
懐かしいものたちは去り
馳せる心のゆく先を 僕は知らない
ひどくさびしい 命は どこにゐても
それでも 雨音は低くうたひ 夜はしづか
ひとびとはながく 目を伏せる
それぞれの 生き場所で
互ひを 気付くこともなく
(二〇一六年三月十一日)
永遠の昨日
永遠の昨日へ
飛んで行つた僕らの鳥は
かへつてこない
優しげな
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