旧作アーカイブ4(二〇一六年三月)/石村
月六日)}
ノクチュルヌ
雨音は 低くうたふ
ひとびとはながく 目を伏せる
どこかから来た夜が
そつと雨の下にすべり込む ――
そしていくつもの命が いまこのひと時に
美しい樹々だつた日のことを想つてゐる
それぞれの 生き場所で
互ひを 気付くこともなく
僕はここだけではなく どこかにもゐる……
なぜだらう それを想ふとひどく胸がざはめく
(痛いまでに 苦しいまでに!)
雨音が低くうたふ しめやかな夜には
その遥かな想ひが 僕を果てない深みへと引き込むやうだ
同じ小さな星から 別れ別れに この地に降り
いまかうして 僕だけで
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