旧作アーカイブ4(二〇一六年三月)/石村
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木立の中を
木立の中を ほの白い それが
すばやい鳥のやうに 通つてゆく
あれは――知つてゐる
なくしてしまつた 私の想ひだ
私の名を呼ぶたびに 切なげだつた
お前の 面影は 私の心から
うしなはれて あそこにある
そして お前の心から うしなはれたものも
お前をはなれ ひとつの想ひに結ばれ
私の知らない 空と時をさまよつてゐる
ことなる空 ことなる時 ことなる海を
わづかに すれ違ひながら
ふたつの想ひがゆく それぞれに かなしげに
何も 消えはしない
喜びへと 溶け入るまでは
かなしみであるうちは 想ひはいつ
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