九分九厘、最終出口/ホロウ・シカエルボク
確認した、ナビゲーション・システムが故障しているのだと忌々し気に語って、記憶の奥底にあるはずの番地を引き摺り出した、経験は便利さを必要としない、画面を確認しない分だけ彼の運転はスムーズだった、そしてハンドルはまた新たなエピソードを飲み込んで悶々としていた、タクシー、運転席と後部座席の他人、不思議といえば不思議な光景に違いない、財布の中の札と小銭をどういう風に組み合わせようかと悩んでいた、だいたいいくらになるかの見当はついていたから…あんなことがなければなかなかに上手く組み合わせられたはずだった、つまりは、運転手の心臓麻痺ってことだけど
信号待ちはそのまま終わらなかった
文房具屋の絵
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