九分九厘、最終出口/ホロウ・シカエルボク
ない深夜の公衆電話の中で長いコートの女が泣いている、受話器を繋ぐコードは運命のように彼女の肘の辺りに絡みついて、愚直なほどに白い蛍光灯のあかりに、あまり魅力的ではない混沌が蜃気楼のように浮かび上がっている、タクシーが一台だけ、日常のアスファルトを滑り去って行く、女はそれ以上どうすればいいかわからないみたいで、台詞どころか段取りそのものまですっぽ抜けた初演の役者みたいにみえた、誰かが彼女の喉を掻き切ってやるべきなんだ、小さなナイフでそれは充分なことなんだ…でもそこには誰も現れはしなかった、おかげで女は、小さなブラックホールを待っているきちがいのようだった、血よ、報われぬもののためにこそ踊りなさい、あ
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