【批評ギルド】『潮騒の丘』嘉野千尋/Monk
。静かだが力強く語っている。海
の強大さや起源として辿り着く場所としての海を。何もかも包み込み洗い流す
海を。だが、しかし!
>何も癒さぬ何も救えぬ
>この海は救わない
救ってくれませんよ、海。話が違う。なんだよケチ!じゃなくて厳しい。お
前はこの場所に救いを求めて来たのかも知れないが、俺がお前を救うことはな
いよ、と。そうおっしゃるのは海自身ではなく作品を語る話者なのだが、この
話者は誰だ。まさしく今、海原に直面している自分が自分自身へ語る自戒のよ
うでもあるし、過去に海に救いを求めた先駆者からの伝言のようでもある。ど
ちらにしろこの話
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