なつぐも 他二篇――エミリ・ディキンソンの詩篇に基づく(再掲)/石村
なつぐも
―エミリ・ディキンソン " AFTER a hundred years --"に基づく―
ともだちがだれもいなくなったとき
わたしはその野原にいきます
青々と茂る夏草のむれのなかに
ちいさくつき出ている石があります
その下には むかし
この野原でゆきだおれて死んだ
詩人がうめられています
その石には 詩人が死ぬまぎわに
もらしたことばが きざまれていたと
だれかがおしえてくれました
長年の風雨にさらされて
文字はすっかりうすれています
こどもらがときおりやってきて
その石にきざまれた文字をなぜていきます
あの子らに
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