I Know I`m Losing You/ホロウ・シカエルボク
 
ろな思いにとらわれたままだったから身体が上手く動かなかったのだ。こうして日常の延長として―洗濯や掃除と同じように―黙々と出来るようになったことが、わたしには嬉しかった。どんなことでも、上達が感じられる瞬間というのはいいものだ。そんなこといつまでも続けられると思うなよ、昨日の男は泣きながらそう言った。だけど、もう何年続いているんだろう?五年や六年なんて話じゃない、そもそもこの家に越してきて、もう何年くらいになるんだろう?いろいろな偶然が重なって、わたしは誰にも邪魔されることなくこの生活を続けることが出来ている。新興住宅地の路地のどん詰まりで、わたしがこの家を買ってほどなく、周囲の家の者はみんな死んだ
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