旧作アーカイブ3(二〇一六年二月)/石村
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窓
窓は 今日もひらいてゐる
昨日来た風が そこにとどまつてゐる
まばゆい世界から わずかに零(こぼ)れた
よわい光が 私の中に そそいでくる
鳥たちは やすらふことなく きらきらと
せはしげに やつて来ては 去つていく
――また花が咲く 季節になつたと
――だがそれは もう 同じ花ではないと
澄んだ風は つよく吹く
無数の光の粒が 愉しげに たはむれてゐる
幼くて 逝きし者たちが 笑ひさざめきながら
かなたの野を渡つていく――
ここでは 時は 過ぎてゆかない
昨日は明日へと つづいて行きはしない
みたされた
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