旧作アーカイブ2(二〇一六年一月)/石村
私は笑みを浮かべる 今ほど優しい 心をいだいたことはない と
それでゐて これほど 悲しいのは?
ひとりで 笛を 吹いてゐる
むかし覚えた ひとつきりのひとふしも いつしか忘れ
笛の音は ほそく 青く 澄みわたる
私は 夢をえがく ひとびとはそこにゐる
空と土がひろがり 樹々があり 季節がめぐる と
だが私は また ひとりにかへる 永遠を見る
そこには ほんたうは 何もない! それでも
私は 願つてゐた 懐かしいひとたちが
そこにふたたび もどつてくる日を
笛の音は ほそく 青く 澄みわたる
そこにだけ ちいさく 空がひろがり 時がながれる
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