旧作アーカイブ2(二〇一六年一月)/石村
 

私はこれを はなれることができない

さやうなら
また君の声がきこえる


(二〇一六年一月十三日)




  笛


ひとりで 笛を 吹いてゐる

何だらう
この痛みは
ひしひしと 胸にささつてくる これは?

ひとりで 笛を 吹いてゐる

むかし覚えた ひとつきりのひとふしを
くりかへし くりかへし 飽くこともなく

ひとりでゐる 全く! たれにきかれることもなく
私は 感じてゐる なにものかで みたされた このひと時を
私は 感じてゐる たれに知られることもなく ――

愚かだつた頃の 想ひ出さえ 何もかも懐かしい

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