旧作アーカイブ2(二〇一六年一月)/石村
でも自然は美しい 地は 空は
遥かなものと ひとびとは自ら慰める
私はかれらをあざ笑ふ ―― たれよりも笑ふべきものは私であるのに!
うすく霞んだ空のかなたを 美しいものたちが通り過ぎる
(ほらあれを)私は指さす 今度はかれらが私をあざ笑ふ!
それでも命は そこここで芽吹いてゐる
やはらかな陽に 溶けかかつた霜が輝いてゐる
そして喜々として 鳥たちはうたふ また この季節が来たと
それでも私の心は喜ばない――ずつと望んできたものは いつもここにはない
君はもう とうにそれを知つてゐた
そしてひとは行つてしまつた さやうなら
春がもう そこまで近付いてゐる
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