旧作アーカイブ2(二〇一六年一月)/石村
心からの歌を したしくかはすことができるのは ――
お前はしきりに 何ごとかを告げる 生きてゐる者たちへ
肉に棲む者に それは きこえはしないのに
うす青い風の お前は かなしんでゐる 哀れなひとびとを
お前の淡いからだから響く 声はきかれることはない
いつお前は 気付くだらう
真実の言葉は 優しすぎるので
かれらの心に ふれることはない と
名もない花が いちめんに咲く野原で
泣きくたびれて眠つてしまつた 少女の見る夢を
お前の声が 響いて過ぎていく
夢の中で 少女はしあはせだつた
(お前の懐かしい声と 優しい目と……)
伝へられない想ひを もう
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