旧作アーカイブ2(二〇一六年一月)/石村
音(ね)が 白い夜の底に溶け入る間に
そしてまた 多くの命が ここに来るだらう
私は語りかける ―― だが何に向かつてか?
ひとはゐない どこにも
空はある ―― 雪は舞つてゐる ――
そして涙が しづかに 零れていく
(二〇一六年一月四日)
早い春の日に
或る季節が 弔ひを終へた あかるい午後のこと
名もない花が いちめんに咲く野原で
少女が いつまでも 泣いてゐる
(伝へられない 想ひのために)
失くされた 魂ばかりが
何もない空を 愉しげに わたつてゆく
いつもさうだ! かへつてこない者たちだけだ
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