浮/後期
 

日々、わたしは、同じ場所に座り
風が生い茂る遥か向こうを
眺めている
決まって吹いてくる草に
全身をはためかせては、萎れる。
そして、次から次
生まれては、崩れていく草の波が
風を通して
わたしの背後で消え去って逝く
しかし、わたしの背後には
ひっそりと夢が生まれはじめている
制御されることのない
幾方向へのねじ曲がりの時間の世界が
かりそめの住人のわたしを
なんなんりと受け入れてくれる
絶えず新人として、わたしは
不確実な代役として
冷たく見守られている夢に
頭から没入してゆく一本の棒になる

小説を捲る、見も知らぬ男が
見も知らぬ人々と、会話をしてい
[次のページ]
戻る   Point(0)