秘法(第一巻)ほか九篇/石村
 
づいてをり
解決を見るけはひもなく
十年すぎても家来たちは
王様が行方不明であることに
気付いてゐないのであつた

森のきこりの息子がひとり
楡の根元に穴をほり
王様のなきがらと
笛をうづめた

それから小刀をとりだして
楡の木の幹に
「ぼくのともだち」
と彫りつけて

目をつぶり
手をあはせた


(二〇一八年十二月十七日)




  降雪


冬の底にかさなつて行く沈黙
ああ さうか これは
ことばのない いのりのやうなもの

白くなつた世界に
目をつぶりたくなる


(二〇一八年十二月二十一日)


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