秘法(第一巻)ほか九篇/石村
 
の憂愁(メランコリア)



  琥珀


ちひさくなつてゆくいきもの

(白亜紀の蝶がしづかに目をさます)


(二〇一八年十二月十二日)




  銀世界


雪に埋れた日時計が時を刻む

終末まであと二分。


(二〇一八年十二月十五日)




  墓碑銘


どうしやうもなくて
笛を吹いてくらしてゐた王様が
楡の木かげで
息をひきとつた

家来たちが宮廷で
グローバリズムと地球温暖化について
ながながと議論してゐる間に
行方不明となつてから
十年後のことだつた

会議は今もつづい
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