この夜はあの夜/ホロウ・シカエルボク
 
そうだった

そのままつららになるような気がしたけど
もうどんなことも試す気にならなかった
俺たちはもう疲れ切っていて
あとは運命に任せるしかなかった
いつか重なるように眠りについた俺たちは
ひとりは目覚めたけれどもうひとりは眠りの先へと行ってしまった
クリーム色の病室の天井は
誰かがなにかを語る前にすべてを俺に教えてくれた

ああ、神様、生き永らえることは
そう出来なかったあいつよりも確かに哀れっぽい
あの頃のようにレコードに針を落とすことはなくなったし
あの頃のようにナマの珈琲を口に出来る店も少なくなった
若いやつらの話すことの大半の内容は理解出来ないし
桟橋か
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