この夜はあの夜/ホロウ・シカエルボク
 
橋からの景色は味気なく、そして不潔さを増した
そっちに出向いておまえに伝えようか、この夜はあの夜だって
あれから俺がどんな暮らしをしていたかなんて、そんなことを
辛気臭いイギリスの映画みたいに
だけど
こうして振り返る景色のなかに居るおまえは
そのときどこに行ってしまうのだろうと
そんなことを思うと
どうしていいのか分からなくなる
夜は同じように更けていく
くるくると運命が
暗色のグラデーションの幕を回すように
あの頃より少しだけ恵まれた格好をして
俺だけが手に入れられなかったチケットのことを考えている
あの頃にはどこからも聞こえなかった
誰かの笑い声が微かにこだましている

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