この夜はあの夜/ホロウ・シカエルボク
のショーウィンドウは
冷たすぎたけれどただ街路で風を受けているよりは幾分かマシだった
そんな物語があったよな
ずっとある店の前で佇んでいる復讐の話
桟橋の向こう、海がある辺りに
見たこともない青い光が瞬いている
あれはなんだろうね、船なのか、それとも
数分前に死んだ誰かのたましいなのか…
ふたりしてそれを見つめていると
未来なんてとっくに切り取られていたんだと
誰かにそう囁かれたような気がした
俺たちはそれを
否定も肯定もしなかった
沈黙は肯定のようなものだって
いつかなにかで目にした気がするけど
ちがうね、それは
沈黙は無関心さ、少なくともそのときは確かにそう
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