夜の騎士/岡部淳太郎
影の中にあってさえ
夜を征服しようとする人々の笑うべき
悲しい努力
それは五百年前のこと
彼の肉体は滅んだ
それは五百年前のこと
彼の女王は滅んだ
いま実に久しぶりにこの地上にさまよい出て
彼はそれに気づき悲しむ
かつての騎士の恋人
地中に埋められた骸
その白骨
もう会えない
この魂の隣のひとかけらであったはずの彼女
そして彼の雌馬は逃げた
それは五百年前のこと
そして彼の剣は錆ついた
それは五百年の間に起こったこと
いまや進むことも出来ず
戦うことも出来ず
彼はひとり
夜をおびやかす都市の灯りを遠くに眺めて
孤独を持て余す
それは五百年前のこと
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