飛ぶ夢など見なくてもいい/ホロウ・シカエルボク
 
うに街中を踏破し、住宅地の背後にそびえる小さな山を見た、夜の山は昔はなんだか怖いものだと思っていたけれど、いまそこに在るのは子供のような好奇心をそそるアトラクションのようなものだった、私はほとんど迷わずに木々に囲まれた小さな舗装道に足を踏み入れた、街灯のひとつもなかったけれど、月や星のあかりでぼんやりと明るかった、心が躍った、そんなふうに興奮したことなんてこれまでなかった気がした、私は実際楽しいと思うことがあまりなかったのだ、友達連中がカラオケなんかに熱中しているのを横目で見て、首を傾げたりしていた、私だって歌うことは好きだけれど、カラオケに合わせて歌うのは好きじゃなかった、それは歌かもしれないけ
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