飛ぶ夢など見なくてもいい/ホロウ・シカエルボク
しか出来ないようなことがしたい―真夜中を歩くとか―そんな気まぐれだった、たいした街ではない私の居住区は、陽が暮れるとほとんど誰も外に出ることはない、古くからの住宅街なのにまるで、ニュータウンのような独特の寂しさを醸し出す、もともと私はそんな時間に出歩くのが好きだった、年頃になると親があまり遅くに出歩くことを許してくれなくなって、出来るだけ下校時間を遅くしたりとかして、誰も居ない街を楽しむ工夫をしていた…そう、いまなら誰にも止められることはないではないか、ただそれだけの軽い気持ちだった、真夜中の街路に躍り出た私を待っていたのは、背中に羽が生えたみたいな爽快感と、安堵感だった、私はほとんど駆けるように
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