あなたの居なくなった世界に/ホロウ・シカエルボク
 
居た犬舎には
毛皮の匂いだけが染みついている
いつも学者のような目をして
低い声で挨拶を交わした無垢なものたち


正面玄関の天使のレリーフ
同じ表情で佇んでいる
喜びも悲しみも心として同等なのだと
ともすれば白紙に見えるような
手紙を出し続けてでも居るような笑み


ロビーにはきっとまだ確かに
あのころのままの空気が漂っているだろう
そこに住むもののことよりも
訪れた誰かに披露するためのようなあの
鼻持ちならない装飾
どんなときも全員で囲んだ食卓はすっかり埃を被って
しかめっ面をしているに違いない


大好きだった浴室
凝った細工を施したシャワー

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