無の世界/卯左飛四
るとき扉でないものが現れた
そこには何もなかった
やっぱり、と思った
即座に後ろを振り返ると
最後に開けたはずの扉は、影も形もなかった
まるで一番最後に開いた小さな箱に押し込められて
上から元通りに箱が被せられていくようだ
だんだん大きい箱へ順番通りに
二枚目の扉が出てきておかしいと思った時に
取っ手にロープでも繋いどくんだった
後悔しても、もう後戻りはできない
私は立ち尽くした
「無」だけに支配されている空間
何もない
何も存在していない
私でさえも?
自分の手を見ようとした
見たつもりだったけれど、見えなかった
見えない掌を開いたり閉じたりしてみ
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