無の世界/卯左飛四
 

いつものように寝室のドアを開けた
つもりだった
確かに開けたのだ
しかし
目の前にはもうひとつ、扉があった

まだ眠りに就いてもいないのに
悪い夢でも見ているというのか
もう一度ノブに手をかけ扉を開く
またもや目の前には新たな扉
開けども開けども、扉は私の前に立ちはだかる

これはいつかどこかで見た
開けても開けても入れ子になった箱
もしくはマトリョーシカ
だんだん小さくなって、最後は空っぽ
この扉を開け続けても、寝室なんてきっとないのだ
最初に開けるドアを間違えたのだろうか
悪夢なら早く醒めてくれ
すでに何枚目の扉を開けたかは忘れてしまったが
あると
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