その振動が記憶している/ホロウ・シカエルボク
類のものだったのかもしれない。けれどそれも結論として存在しなくても構わないものだった。判ったところでスッキリするとか、失われていた記憶が蘇るとか、そういったことではないような気がした。ああ、そうなんだ、と思って片付くような、些細なことだった。実際に鳴り続けているその音は、ただ垂れ流しているテレビや、たまにたわいもないメールが届く携帯に飽きていた俺にはちょっと興味深いコンテンツのようなものだった。その音そのものには、特別に何かを語ろうというような意志は感じられなかった。あったとしても蝋人形館の蝋人形の瞳程度のものだった。だからこそ俺はそれを不快に感じなかったのかもしれない。ただ呆れるほどにあっけらか
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