平等でない/寒雪
 
押さなければお前が代わりに容器に閉じ込められて、窒息して果てるのだ」。
突拍子もない話だ。
だが先程の時とは違って、目の前で殺人ショーを見せられた後ではリアリティが全く違った。
これは本気なんだな。
狂ってる、とは思いながらも今度は恐怖に震えて懇願する女性を見向きもせず、速攻でボタンを押した。
刹那、アッという間に容器は水で満たされて、女性は苦悶の表情を浮かべている。
見るに堪えない。
僕は容器に背を向けて、ただ絞首刑に処せられた死刑囚の死をひたすら待ちわびる看守のように、事が終わるのを待ち続けた。
どれくらいの時間が経過したか、体感では1時間も経過しただろうか。
実際は大した時
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