平等でない/寒雪
いボタンなどどこにあるのか、と思った瞬間に目の前に丸いテーブルに乗せられた赤い押しボタンが一つマジックみたいに現れた。
「決めるがよい」。
有無を言わせないムードを漂わせる男の声。
縛られた男の方を見ると、涙目で首を振り、命乞いをする姿が見える。
その姿を一瞥しながら、僕は何事もなかったようにボタンを無造作に押した。
音もなく開いた穴に吸い込まれていく男。
数秒後に響く絞り出したような男のうめき声。
急に鼻孔に生臭い血の匂いがへばりつく。
ああ、死んだのだな。
なぜか冷静にそう考えていると、目の前の壁にドア状の入り口が浮かび上がる。
「先に進むがよい」。
相変わらず高圧的な男
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