いったいどうしてこんなことを思い出したりするのかね/ホロウ・シカエルボク
 
手だった、このそこそこ長い人生の中で、毎日何人の知人とすれ違っているのか、皆目見当もつかなかった、とはいえそれほど仲良くしていた人間も居なかったし、取るに足らないといえば取るに足らないものだった、店を出る、商店街を歩く、本屋を覗く、いくつかの本を買う、ミュージックショップを覗く、一枚のCDを買う、知らないシンガー、ジャケットが気に入って買った、レコードの時代にはもっとそういうことがたくさんあった、近頃はCDもろくに売れないそうだ、パッケージにこだわらない連中が増えたということは、感性が自堕落になってきたということだ、時代遅れと言われようが、おれはそう考える、皮のない栗をコンビニで買うようなものだ、
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