おわりの譜/秋葉竹
 

り〜んご〜ん り〜んご〜ん

葬送の鐘が鳴るまえに、
望月が光り、さらさらと降りしきる下界、
かわきたての夜の街は
月光の白色でまっさらになる

けれど海へつづく坂道をころがる
僕の自転車は
しっとりと濡れそぼった
アスファルトの黒に残された、
あの人の自転車の
ひとすじの車輪のあとを追うしかないんだ

あくる朝は
しのつくやさしげな雨のなか
あの人のか細い息を絶やさないために
この街の風景によりそう孤独な部屋を出て
それでも
あの人の信じた熱いひかりの国の
清く涼しげな川床を想い浮かべながら、
風船の金魚を追いかけることになるだろう。


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