小舟までの距離感/瓜田タカヤ
で一気に地面を蹴り揚げて船側に持っていこうとしたんだが、
なぜかN君の左足は動かない。
良く見ると、
初めに脚をかけた瞬間少しずつ船と陸地との間は距離を持ち始めていたのだ。
そしてN君の足コンパスが徐々に開いていった、楠が「ジャンプ!」と言ったのだが、
コンパスはほぼ180度にまで達していたので、
既に踏ん張ることが出来なかったのだろう。
N君は岸と船との間の海に、子分達が見ている前で落ちてしまった。
海は思いの外深く、頭まで浸かった後に全身が現れた。
みんな一生懸命N君を助けようと引っ張り揚げた。
俺は泳げなかったので、ちょっと離れたところから見ていた。
中学校
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