草の歌 ?/flygande
原。閻魔は夕餉を摂りながら子供たちにひとつずつ石と食べ物を分け与える。清らかな水を含むから、稗(ひえ)の重いこうべは深く垂れ、風が立てば穂波はさざめき、農具を担いだ鬼たちを振り返らす。鬼角は額から頬へとやさしく根を張り、悲しげな眼球を抱いている。さて、積み石遊びは子供の領分。鬼たちに手引かれて笑い声。小さな手と手は不揃いな賽を組み上げる。生きていることはほがらかな罰。死んでいることはさびしい許。やがて屈曲しながら彼岸へと向かう、橋梁とは地から始まり地に終わる祈塔。石の隙間から一輪の竜胆(りんどう)、新しい水の味を確かめている。岩上で休む野猫の片目は潰れ、ときおり白い宇宙がこぼれている。
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