草の歌 ?/flygande
くさきりはら橋、切符を切る。渡行者は四つ足に始まり、二つ足、三つ足、六つ足、七つ足、十四足、百足、百二十八足を数える。足のある者は足で渡る。足のない者は足を借り、足を返すと腹ばいになってまた山へと消える。その体に手を振り彼らは彼らの体と別れる。その心に手を振り彼らは彼らの心と別れる。洞(うろ)で生まれた子鹿を連れて母鹿が渡りに来るけれど、橋のたもとでくすぶっていた蚯蚓(みみず)に最後の足を貸してしまう。風は親子を優しく包み、その膝下からまた野を始める。首だけを動かして食む野いちごは口の中で腐っている。
くさきりはら橋、石を積ます。長い雨季の終わり、地獄の入り口は涼しい河原。
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