静寂がまた暗い口を開ける/ホロウ・シカエルボク
でなすべきことはもうそれだけだった、コンバースのスニーカーを履いて、石畳の遊歩道を奥へ奥へと歩いて行った、それは結構な距離だった、なにしろ、木を植えているだけなのに、やたらとだだっ広いところなのだ、男はまるで自動操縦されているかのように遊歩道の終わりを目指して歩いていた、その動作は男自身がすでに、運命や人生といったものにケリをつけているのだということを如実に語っていた、微かな足音とどこかで鳴いている夜の鳥の声だけが小編成の室内音楽みたいに細やかに聞こえ続けた、やがて目的の場所に辿り着いたとき、男はまぼろしを見た、素っ裸の若い男と女がある木の前で互いの手足を切り落とす光景だった、それが真実なのかどう
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