静寂がまた暗い口を開ける/ホロウ・シカエルボク
 
どセンセーショナルな事件であったものがすでに、酷い過去のような語られかたをするようになっていた…そんな中、二月のある深夜に、ひとりの男が人知れずその公園を訪れた、どんな感情も存在しないといった様子で、おそらくは自ら命を絶ちにきたものだった、その街の出身ではなく、在住でもなかった、どこか遠くの街からわざわざそこを選んでやって来たのだ、理由はひとつだった、あの事件があった場所だからだ―同じ場所で、同じ枝からぶら下がってみよう―男にしてみれば最期に残すブラック・ジョークみたいなものだった、ロープもわざわざ派手なものを選んでいた、それは小さなバックバッグのなかでカサカサと揺れていた、男にとってその人生でな
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