鉄塔/まーつん
 
らは
光る布のように見えた
蒼穹に誘われた主婦の手で干された
洗濯物のように

鉄塔のあちらこちらに結わえられ
時折、ピカリピカリと光の信号を送りながら
音もなくはためいているのだ


旅行鞄を傍らにおろし
それらを見あげていると
私の脳裏にひらめくものがあった

どこかの家の芝生の上で
笑いの弾けた子供の顔や
夕暮れ時、なだらかに蛇行する土手の坂を
歩み去っていく女子高生の
小さな背中が

そうした
見知らぬ情景にまとわりつく
懐かしさが私を当惑させた

卓越しに微笑んでくる
おばあちゃんの笑顔
畳の上ですねる子供の
への字に曲がった唇

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