鉄塔/まーつん
 
小高い丘に
鉄塔が立っている

周辺の家々に
電気を送る為なのだろうが
今はもう使われていない

住む人も絶えた
この地域には
もういらなくなった

このあたりに
ポツリポツリと散在する家屋は
窓に板が打ち付けられたり
門の周りに張られたロープに
「売家」という札が下がっていたり

どの窓も、みな暗い
割れていも、いなくても
光を失った目が、私を見つめ返す

気持ちのいい筈の
晴れ渡った五月の空の下に
裸の骨組みを押し付ける鉄の墓標と
取り払われた黒い電線、失った絆

だが
私は見た
鉄塔の端々から
何かが風に翻っているのを

それらは
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