あの頃と同じように赤い/ホロウ・シカエルボク
 

ほんのすこし長く
少年で居過ぎたのさ
膨大な時計の回転のなかで
上手くやるコツを見過ごしてしまった
高速鉄道の窓から見える景色に限りがあるように
自分の思うがままに走り過ぎたのさ
ごらんよ、手のひらのインクの汚れを
あたらしい仕事のために書きものをしていたんだろ
真夜中過ぎまで眠れなくなったのは
ほんとうはすべてのことを判ってるってことなのさ
青写真のほとんどを破り捨てざるを得なかったのに
今だって出来るつもりでいる
そして真夜中にワードを立ち上げている
おれはとても人目を引くよ
でもそれはだれも居ない廃屋の窓から差し込む光のような
空っぽで居続けているせいなんだ
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