すんでのところ/坂本瞳子
来て金の粉を
振り撒いてはくれるけど
イタズラに過ぎない
竜巻や台風が助けにはならない
洪水などもってのほか
時計を手にした兎を追ってはいけない
鍵を一刻も早く鍵を合わせなければ
鍵をなんとか鍵を合わせなければ
ならないのだけれども
冷えた手がいうことをきかず
血飛沫あげない擦り傷が痛み
目眩さえもしてくるけれど
この鍵を開けてしまわないことには
なんとも先に行けない
あれこの鍵は先程試したのでは
なかっただろうか
なにがなんでもいいからどうも
早く鍵を開けてしまおう
蹴飛ばしても拳を振りかざしても
非力な自らの四肢が傷つくばかり
痣が増えるばかり赤や青や紫
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